「よー侑士、学食行くのか?」
今日は廊下がやけに滑るなーと思いながら歩いていると、D組の窓から見慣れた顔が覗いた。
「そうやで」
「俺も行く!」
岳人は机の上の財布を引っ掴むと、窓枠をひょいと飛び越えてきた。
「すぐそこドアなんやからそっちから出たらええやろ」
赤い頭をポンポンと叩くと、大きな瞳がこちらをきっと睨んできた。
「てめー頭叩くなっつてんだろ!!」
「ん?ああ、すまんすまん」
そういえば前にも言われたような気がする。
ドアの話はスルーかいな。
「俺の方が年上なんだからな!!」
「はいはい」
「それがガキ扱いされてるみたいで嫌なんだよ!!」
「いった」
脚を蹴られた。暴力反対や。
そんなんやからガキ扱いされるって何で分からんのやろか。
今日はやたら過剰に反応してくる。
どうせまた誰かにからかわれでもしたんやろうな。
「俺が大人になったら侑士なんかヨユーで抜いてやんだからな!!」
「最低でも20cmはいるけど」
「んなモンすぐ抜けんだよ!バーカ!!」
「ほな俺もあと20cm伸びるように頑張るわー」
「198とかありえねーよ!!バカじゃねーの!?」
バカバカ言いすぎや。関西人に向かって失礼な。
「でも嬉しいなぁ」
「あぁ?!」
「大人になるまで友達でおってくれるってことやろ?俺の身長もよー覚えてくれとるし」
「は、」
「うんうん、ええで、照れんでも」
そしてつい、ポンポンと。叩いてしまった。癖で。
…月面宙返り蹴りなんていつ覚えたんやろうな。
めっちゃ痛いわ。
から揚げでご機嫌取れるやろうか。
隣の席が埋まる前に、はよ学食まで行かなあかん。
2012.11.25