現在地、奴の部屋。
そして、奴の腕の中。

会話もなく ただただ抱き締められていると、揺り籠でゆらゆらと揺らされているような錯覚に陥る。
外から聞こえる鳥の声も、車の音も、次第に遠く消えて行く。
そしてぼんやりとしてくる、視界。
目蓋が落ちてきたのか、涙でも滲んだか。
その判断も出来ない程に、緩やかな空気に全てが止まってしまう。


このままじゃ、俺、馬鹿になっちまうんじゃねーか。

──これは、よくない。


そんな、危機感に似た何かが脳を過ぎるのだが、やがてそれも溶け消える。


ああ
もう
どうだっていい


そのうち、俺、溶けて無くなっちまうんじゃないか、とか、砂みてぇに崩れて消えるんじゃないか、とか、
温かさに目を瞑りながらくだらねー感覚に浸る。

だが、頭を撫でる厳つく優しい手の感触に、俺は消えて無くなってなどいないと実感させられるのだ。
















盲目への危機感。

2009.4.12