注意
樺地妹(ほぼ創作)が出てきます。
三月十四日、ホワイトデー。
バレンタインに頑張ったかわええ女の子がドキドキしてお礼を待つ日。
…うん、俺、何故かバレンタインの記憶が無いんやけどな。
気が付いたらなんかあちこち怪我しとるし髪の毛短かなってるし跡部怒っとるし。こわいわー。
「そうよ跡部。かわいい女の子がお礼を待ってるの」
「どうするつもりだよ?…ったくよー激めんどくせー」
「悪かった…。だが、樺地の妹が他の男にたぶらかされている姿を実際に目の当たりにしちまうと…」
「まあよりによって忍足だしな」
「仕方ねーよな」
「完全に人選ミスだ。あの時の俺様はどうかしていた」
「あれ?俺今めっちゃdisられてる?」
「こうなっちゃったものは仕方ないわ」
「跡部が明日頑張るしかないねー」
「樺地の妹にはちゃんとお返し渡すんだろ?」
「ああ…当然だ」
「じゃあその時一緒に、樺地君にも何か渡しましょう」
「……」
跡部の顔が赤くなる。
相変わらず分かりやすいなー。
…そして、ホワイトデー当日。
メス猫達へのお返しを渡し終えた跡部は、後で家に寄ると告げて、樺ちゃんを先に帰らせた。
「…俺様が今まで食べた既製品の中で、一番美味かったものを取り寄せた」
「マジマジスッゲー!!食べてもE!?」
「駄目だ」
部室のテーブルの上には、可愛らしいケーキが何種類か並んでいる。
「まあ今まで食べた中で一番美味かったのは昨年の俺様の誕生日に樺地が作ってくれたケーキなわけだが」
「さらっとのろけるのやめろよ」
「でも、それ渡しただけじゃ…妹のチョコ手伝った分のお礼としか思われないんじゃねえの?」
「そうだな」
「そうだそうだー!」
「もう一緒にラブレターでも入れといたらええやん」
「ラぶッ!!?」
動揺した跡部は、テーブルに頭をぶつけて舌を噛んだらしい。
…こら無理そうやな。
「そこで、こんなものを用意しました」
「樺地君に気付いてもらえるかどうかは分からないけど…」
樺ちゃんのお家に上がらせてもらうと、妹ちゃんが不思議そうにこちらを見上げてくる。
「なんや?お嬢ちゃん」
「…おにいちゃん、このひとだれ?」
「ウス…前にうちに来た時に…おままごとの話、したよ」
「えっ!?あのひと、こんなにうさんくさくなかったよ!」
「ひどっ」
「実はこいつはこんなに胡散臭い奴なんだ。近づいちゃダメだぜ?」
「はーい」
「ひどっ!ちゅーか然り気無く足踏みつけるんやめや跡部!痛い!」
妹ちゃんを俺から引き離した跡部は、樺ちゃんの隣に腰掛け、逆サイドに妹ちゃんを座らせた。
ハーレムや。樺地サンドや。
跡部は、ケーキの入った箱を妹ちゃんの目の前に差し出す。
「さて…バレンタインのお礼だ。受け取れ」
「あ、ありがとうあとべさん!」
そして、もう一つ。
「…樺地、お前もだ」
「ウ!?……あの、俺は、今年は、」
「ああ…分かってる。これはバレンタインの礼じゃねえ」
「ウス?」
「いいから、受け取れ」
「ウ…ウス…。ありがとう、ございます」
隣の滝とさんとオッサンが一斉にシャッターを切る音がする。
「わあっ」
妹ちゃんが箱を開けると、カラフルなケーキが並んでいた。果物もたくさん乗ってて、小さい子が喜びそうな色合いや。
一方、樺ちゃんが開けた箱の中身も………カラフルやった。
固まる樺ちゃんの様子を見て、妹ちゃんが隣の箱を覗き込む。
「わっ!?」
間に挟まれた跡部は、無言でプルプル震えている。
「おにいちゃんのケーキ、ハートがいっぱい!」
樺ちゃんの箱の中のケーキには……ハート型の砂糖菓子が所狭しと貼り付けられていた。
もう何味のケーキなんか、見た目では全く分からへん。
「ウス…個性的な…ケーキです、ね?」
「ファ、ファーッハッハ、そそそうだろう?俺様が直々にアレンジを加えたケーキだぜ!!??」
「ウス?この、ハート…跡部さん…が…?」
「わたしのには…ハートついてない……」
妹ちゃんが俯いて肩を落とす。
ケーキを覆い尽くすほどのハートはいらんと思うけどな…。
「悪いな。俺様はお前のこと…大好きなんだが、実の妹のように思っててな」
妹ちゃんが顔を上げると、跡部はそっと頭に手を乗せた。
「ほんとう?」
「ああ。俺様がきっとお前に相応しい良い男を見つけてきてやるからな。忍足なんかに引っ掛かっちゃダメだぜ」
「わかった!」
「ひどっ」
「…あれ?じゃあ、なんでおにいちゃんのケーキにはハートが「ファーッハッハッハ!!!!!樺地!!!紅茶の準備だ!!!!」
「ウス」
俺らも少しだけケーキを分けてもらって(ただし、ハートの砂糖菓子は全て樺ちゃんの皿へ行った)、紅茶を頂いた。
ケーキを食べ終え、おままごとの準備を始めた妹ちゃんに近づく影が一つ…。
さんや。
「ねえ、お兄ちゃんのケーキにだけハートがついてたの、不思議だと思わない?」
「う、うん…ちょっとふしぎ」
「ほら、お兄ちゃんと一緒にいる跡部さん、あんなに幸せそう」
「……」
樺ちゃんの隣で紅茶を飲む跡部を指差され、妹ちゃんはぱちぱちと瞬きをする。
……この流れ……
上機嫌な跡部のすぐ横で、
めでたく、協力員がまた一人増えたのだった。
2015.03.29