注意

跡部さんが死にそう。

















「…泣くなよ」

俺が横になっているベッドの脇で、大男が背を丸めて泣いている。
さっきまで笑ってたと思ったのに。

大男が頷きながら口を動かす。
返事をしてるつもりなんだろうが、ずびずびいってて何を言ってるのか分かりゃしねえ。

あんまり泣くなよ、その汚ねえ顔を撫でてやれるほど、もう俺の腕は動かないんだ。

「…でも、ね、」
ずびずびの中から、ようやく言葉が聞こえた。
お世辞にも綺麗とは言えない造形の顔が、きらきらと涙を浮かべる。

「こういう、ことがなかったら、今、みたいに、は…なら、なかったかな、って」
途切れ途切れの言葉の末に、繋いだ手が握りしめられた。
それからゆっくり、指が絡まる。あったかい。

「…そうだな、しかもお前からなんて。絶対なかったろうな」

そう言って笑ってやったつもりが、ひゅうひゅうという間抜けな音にしかならなくて。
その音が妙におかしくて、ただでさえぐしゃぐしゃな目の前の顔が、また変なかたちで少し笑った。

















跡部さんは何したって死にそうにないけどね(だいなし)

2012.7.18