もう手遅れなことくらい分かっている。
この距離と場所が幸せで辛い。
名前を呼ぶと、ごつく浅黒い顔に、更に真っ黒な目がきょろりと動く。
小さな返答と共に返ってくる視線は、果たして俺の何を見ているのだろう。何処までを見抜いているのだろう。
それはあまりにも真直ぐで、咎め責められているような気さえしてくる。
見つめてみればその小さな小さな瞳は、フローラルホワイトの光を放つ。
まばゆいばかりのその光は、きっとこいつの心そのものなのだろう。
その心に、一体何を告げろというのだ。
眩んだ俺の心は堅く口を閉ざし、零れかけた言葉を呑んだ。
きれいなそれに何を求めようというのだ。
淡い淡い光は柔らかく、包むように見下ろしている。
この光さえあれば、俺の足は道を違えない。
それを自ら消そうなどと考えてはならない。
光が消えて道を違え、奈落の底へ転がり落ちたとしても、それが二人ならば怖くないなどと。
決して考えてはならないのだ。
見上げた世界はじわりと滲んで、
俺の瞳はますます盲目になってゆく。
floralwhite■
2008.7.12