俯いた髪の隙間から瞳が覗く。
髪と同じ色をした長い睫毛に縁取られたそれは、何を語ろうとしているのか、ただじっとこちらを見つめている。
しかし今日のそれは いつもの光を帯びた色でなく、暗く曇ったような色をしていた。
それはそれで、お人形みたいで綺麗だなあ、と思うのだが。
人形のようなその人をよくよく眺めてみれば、薄い唇がほんの少し歪んでいるような気もする。
怒っているようにも、泣きそうにも見える、複雑な表情。
そしてその瞳は、責めるようにも縋るようにも見える深い深い青色を湛えていた。
その長い睫毛がぱちり、ぱちりと瞬きをする度、瞳の見つめる先は下へ下へと向きを変えて行く。
綺麗な曇りガラスのようなそれをもっと見ていたいのに、それはついに床を向いてしまった。
もう一度それが見たくて、俺は一言、音を発した。
名を呼ばれたその人はふわりと髪を揺らし、少し光の差したその瞳をこちらへ向ける。
いつものような返答はない。
驚くほど静かな空間の中、穏やかに見えて硬いその鈍い色は、ただただこちらを見つめるのだ。
steelblue■
跡部が勝手にやきもち妬いてる話、のつもりだったんですが
2008.7.12