目が覚めると、隣で樺地が眠っていた。
一瞬ぎょっとして、ああ、と昨日のことを思い出す。
別に何かがあったわけではない。
……何かって何だ、と訊かれると返答に困るのだが。
ただ、だらだらと本を読んで、夕飯を食べて、DVDを見て、そのまま寝た。それだけだ。
でけぇ図体をした隣の奴は、すやすやと小さな寝息を立てている。
その安らかな横顔を見て色々なことを思う。
髪ざりざりしてそうだな。とか、頬っぺた少し荒れてるな。とか、…まあ、言い出せばきりはない。
髪は見た目通りにざりざりしているんだろうか。そう思って手を延ばしかけて、やめた。
今触ると起こしてしまうかもしれない。
いつだってそうだ。
近くにいるのに、起こすのが恐くて触れられない。
起こして、どこかへ行ってしまうのが。
別にこっちは見なくていい。
ただ、隣でずっと眠っていればいいと思う。
けれど、いつか朝は来るのだろう。
だけど起きてもどこにも行かないかもしれないし、どこかへ行った先では跡部の朝食を作るのかもしれない。
2008.6.1